地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

鴻小だより 第14号

発行日:2003年6月5日
発行:伊丹市立鴻池小学校校長
溝淵 裕一 メール
文責:鴻池小学校PTA会長
李 国本 修慈


1.『退化する子どもたち』(後半)

 第12号に続いて、『退化する子どもたち』の中から、子どもたちの行動や考え方について挙げてみます。

 最近の子どもたちの周囲の目に対する敏感さ、と言っても同年齢集団に対する敏感さは異常なものがある。小学校高学年くらいから群れていないと不安でそこしか生きる世界がない。特に女の子にひどい。登校するときも仲間同士で待ち合わせ、昼食も一緒、帰るときも一緒。最近は男子も同じで、一人でいられる力が落ちている。

 一人でいるのがつらいからと仲間と群れる。その仲間が万引きをやっていて自分が誘われた場合、悪いこととは知っていてもそれを拒否すれば仲間から外されてしまう。つまり、規範意識がないのではなく、規範意識を作用させない状況になっているのではないか。

 悪いことをやって警察に捕まるリスクよりも、仲間を失うリスクの方を大きく感じている。

 現在の子ども社会には「強者の論理」だけしかないのではないか。弱者としての自分は絶対に否定されなければならず、いじめられた過去は弱さを思い出させるものとして厳重に封印される。同時に、他者の痛みを思うような感受性も意識的に追放される。いじめの常態化とは多数の傍観者が強者になびいているということ以外何者でもないのである。

 彼らはひどく言葉が貧しいし使えないから、人とはもちろん自分ともコミュニケーションできない。だから自分の気とが世の中から見てどうかなんていうことは全然考えていない、考えられない。被害者がいたということも、よく分かっていない。結局、自分の世界だけで生きているということだ。

 非行をおかした子どもの親は「あの子は本当は優しいいい子なんです。わが家は会話もあるし、一家団欒もあります。本当に魔が差したとしか思えません。」という。学校でも一見問題はなさそうに見える。しかし、何か変なんです。

 被害者の立場に立って考えることや社会人としての約束ごとが全く分かっておらず、自己愛が強く、それを傷つけられたり自分が非難されたりすると極端に反発し、行動する親子なんです。

 優しさも、相手に対する思いやりではなく、自分が傷つかないために気を使っているというのが実態のようである。

 人の心が分かるようになるには、子ども社会での泣いたり泣かせたりという日常の中で、さまざまな心の状態を経験することが必要で、いかに親から説教されたところで「他人の痛み」が分かるようにはならない。

 親は幼児期から子どもを大事にし、可愛がって愛情を注いできたことを話す。しかしよく聞いてみると、親というより祖父母が孫を可愛がるような、あるいはペットに対するような接し方で、物を買い与え、何でも叶えてやっているが、責任のない可愛がり方である。

 子どもはそうされることで心地よさをおぼえ、いっそう親の言いなりになり、自分を認めてもらうことしか考えない。自分で考えたり、我慢したり、話をじっくり聞いたりする基本的な生きる力、自我が成長せず、感情のままに行動し、ひ弱で見栄っ張りになっていく。ぶつかるべき父親のようなものもないし、家庭はあっても中味は無い。そこでは人と人との深い関係は作れないし、体験できない。家族としての関わりの密度が薄くなっている。

 今の親はしかるべきことを叱らなくなった。というのは、何を叱らなければならないかわからなくなっている。

 我が子の未熟さを未熟さとして認識できない。自己中心的な言動を「自分に正直だ」としたり、欲望の抑制が利かないだけの自己主張を「個性的」と受け取っている親も少なくない。

 「そうなる子」と「ならない子」の違いは、生後4ヶ月までの正常な睡眠とその後の「這い這い」がきちんと行われてこなかったことに起因している。

 最近の幼稚園児を見ていて最も気になるのは生活の夜型化である。その理由としては、親の生活に引きずられてずるずると夜更かししているケースが多い。遅くとも、幼稚園の卒園から小学校1年生ぐらいまでに睡眠覚醒リズムをきちんと作っておかなければならない。

 準本能的な行動パターンが出るようになるためには、きちんとした睡眠・覚醒リズムと、子ども同士や大人から活発な環境刺激が必要だ。

 いじめやケンカ・いざこざ・取っ組み合いなど一見ネガティブな関係と、助け合い・協力・喜び悲しみ合うといったポジティブな関係が入り交じった複雑な社会環境が必要なのである。

` 全ての子どもや家庭がこうだとは思いませんが、今このような傾向を強く持つ人が増えていると思いませんか。

 この本は伊丹市立図書館にもあります。詳しく知りたい方は一読されることをお勧めします。また、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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