地域生活を考えよーかい

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重症心身障害児の在宅ケアを支えるケアマネジメント研修会参加報告

重症心身障害児の在宅ケアを支えるケアマネジメント研修会参加報告というか、感想です。
(かなり私的な感想ですので不具合等あるかと思いますが、お許しください)

作成日:2009年1月24日(土)
掲載日:2009年1月26日(月)
分責:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

 標記の研修会に参加してみました。
 今回の目的は、主催者が、訪問看護事業協会(以下、事業協会と記します)さんということで、そのテーマについての事業協会さんの視点だとか、参加者みなさんの体温(?というか、どういった思いを持って関わっていらっしゃるのか?というようなこと)を感じてみたいということでした(この研修は、平成20年度厚生労働省保健福祉推進事業・相談支援の機能強化を図るための調査研究事業ということでした)。
 まず、主催者の挨拶に続き、「ソレイユ川崎(重症心身障害児施設)」の江川文誠さんの講義(「医療的ケアの必要な方の地域生活支援のあり方を中心に」)をお聞きしました。
 江川さんのお話しは、これまでに何度か伺ったこと、その内容の多くは、「医療的ケア」についての極基本的な事柄で、詳しくは、「医療的ケアが必要な子どもと学校教育」(※1)、あるいは「みやぎ障害福祉メモ」(※2)を参照いただければということで省略します。
只、その中で、最近の事項として、医療的ケア全国ネットワークによる「京都宣言」(※3)の内容に及ぶお話し、更に、神奈川県、厚木市、藤沢市における「研修(主に医療的ケアについての)」事業等もお話しいただきました。
 それらの内容等も当日資料がありますので、ご希望の方は、ご連絡ください。
 続いて、今回の研究事業の主任研究者である及川郁子さんから、「他職種連携のためのケアマニュアルの紹介と説明」がありました。
 この「ケアマニュアル」についても、プログラムを頂いた際には、関心(興味)を引くものであったのも参加理由でした。
 午後からは、都立あきる野学園養護学校教諭・小田部恵さん、東松山市総合福祉エリア施設長・曽根直樹さん、川崎大師訪問看護ステーション管理者・島田珠美さんからの「現状と課題」と題した発表がありました。
 あきる野学園での取り組みは、これまでにも聞き及ぶステキなモノで、映画館を借り切ったりというものもあったり、地域の中での、子どもたちの育ちを意識した取り組みのように強く感じられました。
 曽根さんの発表については、福祉の世界に居る者ですと、何度となくお聞きしたお話しですが、数字を伴わせながら、説得力のある語り口と内容で、「他人事にしない福祉」、そして、大抵の方が、なんらかの関わりがある筈の障害者との接点、しかし地域社会の中に無い(あるいは居ない)、人であり思いなどの現実を「諦めず」に頑張ろうというような感じで、共感できる言葉でした。
 島田さんからは、ある事例を通しての「看護」・「医療」の役割(マネジメントを含んだ)が語られました。
 そして、そういった話題提供と午前に行われた「マニュアル」について、約100名以上(だと思います)の参加者を10数グループに振り分けた中、各グループでの討議となりました。
 今回の研修は、訪問看護事業協会さんの主催ということですが、参加者は、看護師の他、福祉職、教職等ということで、それそれの立場から、それぞれの思いなどについて、凡そフリートークといった感じでお話しあいがなされました。
 その(各グループ発表等もお聞きした)中で、最も多い「疑問」、あるいは「課題」が、「誰がやるのか?障害児のケアマネジメント」といったことで、各グループの発表でも、凡そ全てのグループが、同様に繰り返し「誰が?誰が?」言われてました。
 もう少し、その内容を掘り下げてみると、「介護保険には、制度としてケアマネジメントがあるから、キーパーソンが明確で、何かあればすぐに動ける」だとか、「訪問看護で関わっているが故に、それをせざるを得ないような感じになってしまうが、なかなかできそうでないし、(他に)きちんとした相談支援の窓口はないのか?」といったような内容でした。
 そういった内容を聞きつつ、例えば先進的な「東松山市」だったり、「西宮市」だったりですと、それが機能している(決して全てではないと思うのですが)のでしょうが…と、どうも思考が停滞すると言うか、議論が、噛みあわない感じがしてしまいました。
 今回の、研修では、「マネジメント」をテーマに、それをどのように機能させていこうか?といったところに主眼が置かれ、「ケアマニュアル」を作成していこうというもののようだったのですが、その「ケアマニュアル」さえも、私がひと目見たのみで、ほとんど「暮らし(生活)」を感じさせない(られない)ものになっていたり(あくまで私の私見です)と、目的であった参加者みなさんの体温について、温度差を感じずにはいられませんでした。
 その点について、更に考えていくと、多くの方が仰る(参加者の多くは訪問看護師さん)「誰が、誰が?」について、「決まっていれば(介護保険などはケアマネジャー)」できるが、「決まってなければできない(やりようがない)」ということのようで…。
 もちろん、制度なりが整えば良い(おそらく、というか、悪くは無いだろうとは思う、のと、良くない点もあるようにも思います)のかもしれませんが、何が大切か?と問われれば、私ならば、「なければ」という中で、「誰が?」と問われれば、「俺(私)が」と言うのだろう(言わなくっちゃ、やらなくちゃ)と思うのですが…。
 もちろん、そんな思いを肯定しようだとか正論だとは思わないのですが、会場のほとんど(たぶん9割以上)の方々が、「誰が?、誰が?」という思いを持っているのかしら?と思いながら、そんな言葉を繰り返し聞くと、かなりうんざりしてしまうのでした。
 それと、少し話はそれるのですが、午前中の江川さんのお話しや午後の島田さんのお話しに対しての会場からの質問に、やはり、どこででも聞かれる(医療的ケアについて、非医療職が行うことについて)「法的なことが実践を躊躇させる」という言葉。
 ここについても、どうなんでしょうか?。
 個人的な思いはあるのですが、ここでは記さず、そういった質問に対しての江川さんのお答えも、まずはお話しできる範囲内での説明(平成17年の通知など※4)の後、「それ以上のことは、根性のある事業者が行う」と言われた部分に共感できた(この言葉については、曽根さんも同様に思われた旨をお話しされていました)のとともに、もっとそういった部分に焦点をあてた議論も欲しいなぁと思いました。
 しかし(というか、やはり)、関心を抱く(既に訪問看護等で支援の実践を行っている)方々なのですが、障害福祉というか、そういった方々の暮らしについては、それについての知識(制度等の)にしても、それ自体のイメージについても私とは差異があるように感じました。
 それについては、やはり、「医療」だとか、あるいは「介護保険」による「カタチあるもの(のよような)によって、支援している(わかり難い表現ですいません)からではないかと思えたりしています(それでないと支援はできないという固定化された思いがある?)。
もう少し言うと、例えば、「決まった時間」だとか「決まった内容」の支援(援助)をようするに「暮らしの一部」に過ぎないところにしか相対していないからじゃないだろうかと思えたりで…。
 「ケアマニュアル」を見た際にも、「これじゃあ暮らしの支援じゃなく、障害といわれる部分への視点しかない」と思ってしまいました。
このあたり、とっても大事なところではないかと私自身は強く思うところで、先にも記したように、「システム」があればできるから、それを作っていこうという思想は、逆に、無ければ出来ない(と実際に多くの方は言っていますし、実際にそうなのかも知れません、だけど、全てがそうでもないことも言えると思います)ということで(それも本当は恐ろしい)、作ったシステムに(もしかして無理があったり、システムが無理でなくとも、そんなシステムに当てはまらない方がいらっしゃったり…)、当てはめていく…なんてことにもならないだろうか?とか、思い過ごしかも知れませんが、そんなことを感じてしまいました。
 私的ではありますが、基本的に(というか、あたりまえに)、人の暮らしは続いている訳で、そんなに暮らしに添いながら、たぶん解りきらない(決まりの無い)その人の暮らし(生きざま・生活)を共に考えていくということが、マネジメント(…なんて言葉ではないかしら?)ではないかと思ったりで…。
 最後に曽根さんが仰った言葉…「ケアをする(ことが目的となる)ためのマニュアルでは不可で、その人、あるいは親御さんの思いを成し得るためのものでなくては危険である」というようなことや、今後の法の見直しでは、「サービス利用作成費」を「相談支援事業者」として、「誰が?」と言ってる方々が行えるようになるということも、しっかり認識しつつ、それでもやっぱり、こんな貧困な状況の中で、「誰が?」と問われれば、「私が!」と叫べるような、そんな人々がもっと増えて欲しいと痛切に感じました。
 かなりな温度差を感じましたが、これだけの方々(全国各地からいらっしゃってました)をお集めに成り、こういった機会を作っていただいた主催者みなさん及び参加者みなさんに、心から感謝です。

※ 1「医療的ケアが必要な子どもと学校教育」
※ 2「みやぎ障害福祉メモ」
※ 3「京都宣言」
※ 4 http://homepage3.nifty.com/kazu-page/mcnet/MCNet-NEWS06.pdf

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