地域生活を考えよーかい

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伊丹市障害福祉計画(第2期)<計画素案>について

作成日:2009年1月10日(土)
掲載日:2009年1月11日(日)
分責:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

 現在、伊丹市においては、件名の伊丹市障害福祉計画(第2期)<計画素案>(以下、計画と記します)が示され、それについてのパブリックコメントも募集されています(1月13日まで)。
 パブリックコメントを出す方も、そうで無い方も、ぜひ計画の内容を感じ、考えていっていただければと思い、簡単にではありますが、私的感想と共に、読み砕いてみたいと思います。少しの参考になれば幸いです。
 まず、2ページの第T章:計画の考え方では、その意義が記されています。
 法的な位置付けはともかく、この第2期において、「地域の実情に応じ、必要なサービス量とそれを確保するための方策を数値目標として設定します」とあり(普通なんですが)、その中身(実情・必要サービス量等)をしっかり確認していきたいところです。
 3ページでは、計画の基本理念が掲げられ、これまでと同様に4つの理念が記されています。
 このあたり、どこにでもある文言ながら抽象的で、どのように捉えている(捉えられる)のかは、個人差(あるいは市町村差)があると思われますが、大切な言葉として、その文言を考えてみたいものです。
 このページでは、最も大切(だと思われます/私的には)で具体的な文言として、「基本的な考え方」の項目に挙げられている言葉をしっかりと確認しましょう。
 特に「必要な訪問形サービスを障害の区別なく充実します」、更に「希望するしょうがいのある人に日中活動系サービスを保障します」という文言については、これまでのような努力義務的(努めます、計ります、推進します等)な文言と違い評価できるのでしょうが、その実際はどうなのか?といったところもしっかりと確認していく必要があるかと思います。
 4ページでは、計画の位置付けが示され、5ページでは、期間が記されています。
 6ぺージから、第U章となり、重点的に取り組む施策を大きく3点(相談支援・地域移行・就労支援)とし、記しています。
 7ページからは、相談支援システムの体制整備として、体系図(8ページ)等(内訳/9ページ)が記されています。
 このあたりも、どこでも使われる文言が並ぶのですが、その実状(機能の程度/例えば、アンケート等では、存在すらも知り得ないという方が少なくなかったようです)等もしっかり検証するのと共に、9ページに記されている「社会福祉協議会」の力にも大いに期待したいところです。
 また、10ページでは、「しょうがいのある児童」に対する相談支援についても、理想的な文言が並ぶのですが、しっかりとした対応を求めていくことも重要かと思います。
 また、10ページからの指定相談事業等(市町村相談支援強化事業・居住サポート事業・成年後見制度利用支援事業等も含めた)も、まずは「在る(ことさえ知らない方も少なくないので)」ことを知り、利用に繋げていただければと思います(相談支援事業に係る「サービス利用計画」の対象者も4月=法律の見直しにより、拡大される可能性があるようです)。
 13ページからは、「自立支援協議会」についての進行状況及び体制イメージ等があり、こういったこと(これまでにあった福祉対策審議会等も)が行われていること、更にはその内容にも関心を持っていただければと思います(絵に描いた餅にならないように)。
 15ページからは、権利擁護の推進という項目で、その説明等が記されています。
 17ページからは、「地域生活への移行支援システムの構築」として、計画の進行状況や、そのシステム図等が記されています。
 20ページには、具体的な「地域移行」への目標数値が示されています。
 平成23年には、グループホーム・ケアホームが21ヶ所92人分が計画されています。
 この計画では、先にも記しましたワーキング会議等でも議論があったのですが、身体障害者、あるいは重症心身障害者が見込まれていないということが見えてくるように思います。
 そういったことも受けて(?)、22ページには、<重度のしょうがいのある人の豊かな地域生活を>という項目で、以下のように記されています(全文抜粋)。
≪障害者自立支援法により障害者デイサービスは「生活介護」に再編されましたが、「生活介護」を担う事業者も、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複している重症心身障害者のケアを担うことは難しい選択になります。とりわけ、吸引・鼻腔栄養管理・呼吸管理・てんかん発作といった片時も目を離せない医療的ケアの必要な人は、排せつ・入浴・着替えなどの常時介護も必要とします。
 現在、このような人々の受け皿となっている障害者デイサービスセンターは利用者の増加で手狭になったため、平成20年度に改築し、定員の増加を行いました。また、訪問系サービス(重度訪問介護)のサービス見込量を増やすなど、サービスの充実を図っていきます。
今後も「障害者地域自立支援協議会」等で当事者・家族を含めて協議し、個々のケースに応じた必要なサービスが受けられるよう、検討を進めるとともに、レスパイトケアに努め介護者への負担の軽減を図り、地域での生活を支援します。≫
と、上記のようにあります。
この文章が、どういった認識のもとで書かれたかは解りませんが、私的には、多くの問題、あるいは疑問がある文章に読めてしまいます。
 基本理念にもありました「必要な訪問形サービスを障害の区別なく充実します」、更に「希望するしょうがいのある人に日中活動系サービスを保障します」というふたつの文言に対して、「事業者も、重症心身障害者のケアを担うことは難しい選択となる」とか、「訪問系のサービスの見込み量を増やす」ことで、日中活動の場の保障を補うというようにも読み取れます。
 また、訪問系サービスをわざわざ「重度訪問介護」とするところも、福祉対策審議会等でも指摘したのですが、そうすることによって(上記でも難しい選択となるとされる)サービス提供事業者が増えない(報酬単価の問題が大きいです)ということも在る訳で、更に言うと、そういった支援計画(サービスの種類等)を行政主導で行っていくことに危惧を感じざるを得ません。
 そして、末尾に記されているように、やはり(レスパイトという言葉等とともに)、「介護者の軽減を図る」ことが主眼とされ、当人にとっての地域生活の実現(移行)=当人主体という感じは見受けられないといった感じです。
 23ページからは、更に停滞している(と思われる)精神障害者といわれる方々の地域生活支援について記されています。多くの課題が残されているという現状のようです。
 25ページからは、就労支援の推進についての状況やネットワークのイメージ図等が示され(26ページ)ています。
 また、工賃倍増への取り組みや就労サポーターによる支援等の記載もあります。
 多くの指摘はできませんが、今後、ひとつは、障害認定を(現状では)受けていない発達障害といわれる方々等も含めた支援、更に、福祉的就労などといわれる方々等(等には例えば生活介護等を利用する重症心身障害者といわれる方々も含みます)の「働き」についても、明確なイメージを持つべきだと感じます。
 35ページからは、第2期実施計画の目標を掲載しています。
 このあたりの文言は、計画ワーキング会議等での議論も踏まえた中身となっていて、例えば「単にサービスの量を伸ばすだけでなく、どうやったらできるかという点を大切にします」等とあります(とすれば、訪問系サービスを重度訪問のみに例えることは矛盾するのですが…)。
 「発達障害」「高次脳機能障害」「難病」といった文言も加えられています(検討課題として)。
 そして、身近な相談支援システムの体制整備として、4つの事業項目の記載があり、しっかりとこういった事業が行えている(いける)のかも確認していかなければなりません。
 36ページでは、地域生活への移行システムの構築ということで、9つの事業項目が掲げられ、その内容と共に、支援を行う(あるいは行おうとしている)事業者の周知にも大きな力を注がねばなりません。
 只、これらの事業内容(相談及び地域移行の)をみていくと、どうしても(どう見ても)、少ない社会資源という現状が浮かび上がってくるように感じます。
 資源、あるいは資源を作ろうとする者(事業者)が存在するか否かで、大きな違いがあると思うのですが、先に記されてます「どうやったらできるかという点」をもっと深く議論する必要があると思われます。
 37ページには就労支援の推進としての事業項目が掲げられています。
 この点についても、それぞれの持つ意味を、関係者及び当事者、又は、多くの決定権を持つ(持っていると思われる)同居者(家人)へも広く周知していただく必要があると思います。
 40ページからは、第V章として、障害福祉サービスの見込み量、その確保のための方策(説明)が示されています。
 その中で、凡そが、サービスの説明に終始しているのですが、41ページの末尾(4行)に[確保のための方策]として、相談支援の強化や、行動援護・重度障害者等包括支援事業への参入の促進、サービス確保の推進など4項目が挙げられています。
 この4項目とも、少し(かなり)実態とはかけ離れており、経過を充分に確認していかねばなりません。
 42ページからは、サービス利用実績(一部見込み/平成20年度)及び、平成23年度までの見込みが記されています。
 実績で注目する(できる)ところは、居宅介護(身体・家事)が、平成18年から20年にかけて、激減しているということ。
 この点についても、福祉対策審議会等で議論(質問)したのですが、行政の言う理由(ヘビーユーザの方が他界された等の)が、必ずしもそうではないということも言えそうです。
 福祉サービスに関しては、介護給付のみを見るのではなく、「移動支援」あるいは「日中一時支援」等の事業も併せて考えていく必要があります。
 この「居宅介護」の激減は、これまでの当市の給付額削減への意向が見えている(実際に、福祉サービス量自体が減っている利用者さんは多数いらっしゃいます)様に思います。
 このあたりは、相談支援にも関わる問題で、当事者ニーズである給付の決定を行政主導で行ってきたということの結果であるとも言えそうで、先に記された相談支援体制の進展(より民主的な)が望まれるところです。
 と、このページ(42ページ)のみを見て解ることとして、居宅介護に比して「重度訪問介護」の実績の伸びが顕著です。
 この理由は、重度障害者の地域移行の為という見方をされているようですが、実際には、数少なくない方が、これまでの支援計画であった「身体介護」を中心とするプランを「重度訪問介護」に置き換える(換えられる)ことになった結果とも言えます。
 ここにも行政主導の支援計画(介護給付量決定)がなされている訳で、それによってサービスに入りにくい=新規事業者の参入が厳しくなるという、先にも示された理念とは矛盾する結果となります(実際に、重度訪問介護により、単発の居宅介護=例えば1時間の身体介護等には、その採算性から、多くの事業者はサービス提供が困難であるといえます。勿論、併給=重度訪問介護と身体介護ということもできるのですが、その際には、同一事業者ではそれぞれのサービスが提供できない仕組みとなっており、では、それだけの事業者があるのか?と言えば、「無い」ということとなり、この点も、理念・方針に沿わないカタチとなっていると言わざるを得ません)。
 43ページには、平成23年までの見込み量が記載されています。
 さすがに居宅介護も上方修正(?)されていますが、先に述べたような行政主導の相談支援/支援計画が続くようでは、結果が目標値にならないようにも思います。
 また、先には、「重度障害者等包括支援」事業者の参入を促すとありましたが、見込みでは、その利用者数が0。少しおかしな(多くは過去のデータのみに頼った見込みとなっているためかと思われます)カタチとなっています。
 44ページからは、日中活動系サービスについての記載がなされています。
 また、児童デイサービスの数値なども記載(48ページ)されています。
 49ページには、短期入所事業の数値の記載があります。
 50ページでは、グループホーム、ケアホームの数値も記載されており、確保の為の方策として、「重度重複障害者の受け入れも促進する」とあり、このあたりも具体的な手法も含めて、今後注視する必要があるようです(その受け入れにはケアホーム【等】という表現がされています)。
 51ページには、施設入所支援の数値が記されています。
 54ページからは、第W章として、地域生活支援事業についての記載が始まります。
 目的・システム構築イメージなどの記載が続きます。
 56ページには、サービス利用計画作成や相談支援事業が記されています。
 ここについては、この4月にも変化があるかと思います。また、そういったほうの変更点にも、多くの方が周知できるように努めなければいけません。
 そして、60ページからは、移動支援事業についての記載があり、その数値(実績)も、平成18年から20年にかけて減少していく結果(61ページ/障害児は微増)となっています。
 見込み量(62ページ)では、ここでも上方へと記載されています。
 移動支援の量の減少についても、介護給付同様(に、行政主導の支援計画が行われているように感じられます)のことが言えるように思えます。
 63ページからは、地域活動支援センターについての説明がなされ、平成23年度末までには、全ての小規模作業所が、法定事業所へ移行することを目指すということです。
 この移行については、かなり難しい部分(人員や報酬額等)があると思われます。
 66ページからは、地域性生活支援事業におけるその他の事業が記載されていますが、こういった事業についても多くの方が周知されたいところです。
 そして、69ページの下段から、日中一時支援事業の記載となります。
 注視すべき点は、70ページのサービス利用実績で、平成18年から20年にかけての見込み値が、凡そ変わらず(786から793回/年・利用回数)ながら、実績は、平成18年度が1369回、19年度が3070回となっています。
 この数値が、何を示すかも明確で、ようするに介護給付あるいは移動支援の支給決定量抑制(と思われます)の結果(不足分を日中一時支援事業で補うという構図)であると言えそうです。
 このあたりの指摘も、ワーキング会議等で行ったことから(か?)、平成21年度以降の見込み数は、上方修正されています。
 また、[確保のための方策]にある言葉にも注目です。以下、原文そのまま記載してみます。
・ 空き教室等の利用により、ニーズに応じた事業拡大を図ります。
・ サービス提供事業者と連携し、必要な人に的確に届く効果的なサービス確保に努めます。
と、以上のようにあります。この文言についても、しっかりと実行されるようにと願うところです。

以上、簡単かつ適当な読み砕きですが、少しでも参考にしていただければと思います。
施設支援や精神障害者支援については、なかなか深く解釈できませんでしたが、多くの方に、こういった「計画」の中身を知っていただき、更に、「思い(意見)」を反映できるようにと願うところです。
私個人的には、特に重症心身障害といわれる方々との接点が大きいということから、偏った見方となっていますが、この計画素案を見る限りでは、そういった方々の「地域移行(地域生活の維持)」というモノは、見えてこないように思います。
また、福祉サービスの実績や見込み等からも、これまでの伊丹市は、極端な行政主導の支給決定(支援計画)をしていたことが見えてくるように思います。
このことは、市が掲げる「相談支援」にも直結する問題であり、更には、「相談支援」を実行する為の「社会資源の育成」にもみかかわることであると思います。
そういった点をしっかりと見極め(見据え)て、多くの方から、「思い」を届けていただきたいと思います。
なんとなく(というか、かなり)批判めいた内容ですが、決して、伊丹市行政職員みなさんが、とんでもなく冷酷という訳ではなく、多くの皆さんが、真摯に職をまっとうされていると思います。
只、悲しいかな、実態・実状というのは、なかなかイメージされにくく、また、財源等の事情等との天秤にかける(?)と当事者の思い(実情)は、後退させざるを得ないといった感があります。
このことは、当事者みなさんの「暮らし」と同様に、少し(ほんとに少しですが)頑張る支援者(というほどの技量はないのですが/私たちを指します)についても同様に言える事で、如何に、繰り返し、現状の当事者みなさんの「暮らし」と、支援する者の「労苦」等も伝えていかねばならないように思います。
それでも、この数年間、特にこの1年間の間にも、当市行政の立ち位置というか、向かうべき方向は(少しですが)、変わってきたようにも感じます。
協働などといわれて久しいですが、とにかく、エールも含めて、行政みなさんへ向けての声を多くの方々に期待したいと思います。

本文終了


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