地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

地域生活支援の存続、あるいは類似社会資源創出の為の一考察
〜制度下における報酬単価から見えてくること〜

掲載日:2007年10月8日(月)
分責:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

  障害者自立支援法が本格的に施行されて1年。もう、ほとんどそこに向かう力〜例えば、制度への期待だったり、より良く変えていこうなどとういう前向きな思考〜は、失せているのですが、そうも言ってられない現実=矛盾等もあって、以下、私どもの活動(事業)実績から見えるコトについて考えたいと思います。
 私たちは、兵庫県伊丹市という阪神間北部、人口19万程の街で、いわゆる地域生活支援を行う活動団体です。私どもの活動については、以下を参照ください。

  現在、私たちが行っている事業は、居宅介護(介護給付費)、移動支援(地域生活支援事業)、日中一時支援(地域生活支援事業)、緊急一時保護者制度(兵庫県単独事業)で、居宅介護及び移動支援は、個別対応のサービス、日中一時支援は預かり、緊急一時保護は宿泊といった風に分けられます。
 先般、コムスン事件等で、多くの方が気付いた点として、これらの介護報酬の在り方が、社会資源の増加、あるいは創出を阻んでいるのではないかと、私も同様に考えますので、それぞれの報酬単価について述べたいと思います。
 只、私個人的な思いでは、こういった制度等がない頃の方が、新しい活動体の誕生は多かったのではないか?という思いが強くあることも記しておきたいと思います。
 では、まず介護給付費についでですが(資料1:07年08月の支援時間数と報酬額)、月あたり(今回は07年08月のデータを基に記しています)の報酬額が5,436,493円で、派遣時間数が1,610時間、1時間あたりの平均報酬額が3,376円となっています。
おそらく、この数値(1時間あたりの介護報酬額)は、障害福祉サービスの居宅介護事業所としては、恵まれた数値であると思えます。
 その理由としては、私どもの利用者様の多くが重度心身障害児・者といわれる方々で、ほとんどの方が、障害程度区分6、更に、サービス類型における重度訪問介護や家事援助の比率が低い(重度訪問介護が8.15%、家事援助が0.3%=ほとんどが身体介護であるということ)為であると言えます。
 逆に言うと、重度訪問介護の占める比率が高くなればなるほど、平均報酬額は低くなるということは、多くの方が周知の通りであると思います。
 では、適正(?という言い方があてはまるのかは解らないですが)な報酬額はどの程度なのか?と考えるのですが、私どもの事業所の個別対応(介護給付及び移動支援)サービスを提供している総時間数が3287時間(07年08月)で、その報酬額(介護給付費と移動支援事業費の合算)が、8,693,453円となっており、1時間あたりの平均報酬額が2,644円となっています(いずれも資料1参照)。
 私どもの事業所の常勤スタッフが16名(内、事務職員2名)、非常勤スタッフが18名で、常勤スタッフの平均給与は221,416円(07年08月実績、時間外、夜勤手当、休日出勤除く)、平均賞与は349,999(年3回合算)で、平均年収は3,006,991円となっています。
 非常勤スタッフ(登録パート等)の時間給は、850円〜1500円となっています。
 この数字を見ると、障害福祉サービス業としては、まずまずの数字なのかとも思えるのですが、一般的な他業種との比較では如何なるものかとも思えます(私どもスタッフの大半は、扶養義務の在る者です)。
 また、18人に及ぶ非常勤スタッフとの格差も、問題となっているのですが、なかなか常勤雇用へ繋げられない状況にあります。
 そういった点から、私個人の考えでは、こういった居宅介護等の生活支援事業の平均報酬単価(1時間当たり)は、3,000円以上であることが、間違いなく必要であると考えます。
 また、上記の個別対応サービスにおける移動支援事業に関しては、地域格差があり、阪神地域では、尼崎市・西宮市は、介護給付費と同額ですが、伊丹市は、重度訪問介護に準ずる額となっており、地域格差が生じています。
 この事に関しては、私ども事業所の所在地が伊丹市でありながら、4割ほどの利用者様が、尼崎市及び西宮市であったことから、法改正の際に、なんとか現状維持(スタッフ給与の)が可能であったかと言えます。
 更に付け加える点として、法改正の際に、重度訪問介護への移行を考えた利用者様に、これまでと同様に、身体介護と移動支援での支援プランを推し進めさせていただいたことも書き留めておきます。
 社会資源としての維持、増加が見られない背景のひとつには、重度訪問介護や移動支援事業の報酬単価の低さがあることは言うまでもないかと思います。
 そして、法改正の際にも訴え続けたのですが、身体介護と重度訪問介護の併給に関する問題も、そのひとつであると改めて思います(以下参照)。

  そして、我々のような、居宅介護や移動支援事業のみではない事業者(というか、活動体)として、もっと深刻なのは、一時預かりや宿泊といった「間違いなく(それぞの地域に)必要な」サービスを継続・創出していくということです。
 先に述べた介護給付費事業と移動支援事業のみならば、未だ、なんとかやっていけるという実感は持てそうではあるのですが、そこに一時預かり(日中一時支援事業=市からの委託)と宿泊(緊急一時保護=兵庫県単独事業)を加えると、どうなるのかも記しておきます。
 私どもの日中一時支援事業(預かり)の月利用時間(07年08月)が713時間で、報酬額(同月)が893,170円で、1時間あたりの報酬額が1,252円となり、緊急一時(宿泊)に関しては、それぞれ551.5時間、300,270円で、1時間あたりの報酬額は544円となります(いずれも資料1参照)。
 もちろん、両事業共に「多数の利用者を一時に見守る」という上での単価設定であるのでしょうが、私どもの事業所では、そのほとんどの利用者様が、程度区分6であり、宿泊の際(夜間など)には頻回な介護(呼吸管理・体位変換・処置等)が必要であり、凡そ一対一対応が必要であり、実施しているところです。
 少なくても、現在進められようとしている緊急一時保護者制度の短期入所への移行の際には、「単独型」、しかも重症心身障害といわれる方々の受け入れに関して、この報酬単価では、おそらく(かなり高い確率で)この社会資源は増えないであろうと思います。
 更に一点、現在も、人工呼吸器等を使用しているが故に重症心身障害児(者)施設(医療機関でもある)は利用できず(受け入れられない)、私どもの事業所を利用される方すらいるのです。そして、その報酬単価も、同一人物が利用する先によって違う(このケースでは、利用できない医療施設における報酬単価の方が、我々のような零細事業所への報酬単価の2.5倍以上に設定されているのです。繰り返し、これでは、重度障害者等といわれる方々への地域での単独型短期入所は増えようがないと言わざるを得ないかも知れません。
 そして、最後に、私どもの事業及び活動の総時間(サービス利用時間)数が4,551.5時間で、総報酬額が9,886,893円、1時間あたりの報酬額が2,172円となっています(資料1参照)。
 これ以上の説明は不要であるかと思いますが、これでは、地域密着の多機能支援事業者、更には重度障害者等といわれる方々への社会資源は増えようがないのでは?と思えて成りません。
 こういった実態を多くの方々に、しっかり実感していただきたいと思います。


右クリックして、デスクトップにダウンロードしてご覧下さい。
資料:1 07年08月の支援時間数と報酬額
kan071006_1_1.pdf(Adobe Acrobat 文書:41.1KB)

資料:2 短期入所報酬単価表 060302全国課長会議資料から
kan071006_1_2.pdf(Adobe Acrobat 文書:74.7KB)

資料:3 (07年4月〜)伊丹市移動支援単価表(個別型)
kan071006_1_3.pdf(Adobe Acrobat 文書:45.7KB)

資料:4 日中一時支援事業(伊丹市)委託費表
kan071006_1_4.pdf(Adobe Acrobat 文書:53KB)

資料:5 西宮市緊急一時報酬単価表
kan071006_1_5.pdf(Adobe Acrobat 文書:42KB)


追記
決して私自身は、こういった報酬単価のみが、社会資源を創るものではないと確信していますが、普遍的な地域社会、格差なき地域社会を創るには、こういった視点も必要ではないのかと思います。社会福祉基礎構造改革の中で、以前にはあった希望だとか、期待などが、ひどく衰退していく自らを感じながら、幾らかの参考になればと思い記させていただきました。

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