地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

とってもステキな訪問看護ステーションさんへの同行記


掲載日:2012年11月4日(日)
作成日:2012年10月30日(火)
報告者:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい
mailto:kunimoto@kangae-yo.com

 去る10月18日(木)、伊丹空港を朝7時30分の飛行機で出発、行き先は熊本県。1時間程で到着、ほんとに飛行機は凄いっと改めて思いつつ、少しひんやりする(熊本空港到着時の気温が14℃でした)中、今回お世話になります「訪問看護ステーション・ステップ♪キッズ」さん※1へ向かいました。

 空港からはレンタカーで、のどかな風景を楽しみつつ、合志市の「訪問看護ステーション・ステップ♪キッズ」さんに到着しました。

 今回はとっても珍しい(と思います)「小児に特化した訪問看護ステーション」ということでステキな活動を実際に体感(ステップ♪キッズさんは積極的に研修等に訪問同行等を行っておられます)させていただけるということで、喜んで訪れさせていただきました。

 同行させていただく看護師さんは、ステップキッズの管理者の中本さおりさん。初めてお会いさせていただいた印象は、すらっとした姿勢にきりりとした表情でしたが、にっこり微笑み迎えてくれた雰囲気に(結構よくある、というか、私が勝手に感じてしまう看護師さん等医療職者さんの)威圧感は無く、小心者の私もリラックスして同行させていただきました。

 中本さん、各地での公演活動や研修なども手掛ける凄い方で、ご利用者さん宅への訪問の際の車中でも、自らが現在の活動を行うまでの経緯等をお話しくださいました。その際にも自らの職場を選択する際の大胆さ(テレビドラマに魅せられて就いた救急救命現場だとか、人と深く関わりたいとの思いで訪問看護に転身したりと)を感じさせていただき、自らのこも「姉御肌」と仰っていました。二日間ご一緒すると、とっても頼りになるお姉さんと確信できました(私の方がおそらく年上なんですが^-^)。

 このことは、既存の教育システムだとかでは作り得ない「人材」なのではないか?と思えたり、こういった「人」を後押し、あるいは、こういった方の「適所としての職場が地域生活支援(あえて在宅医療だとか訪問看護という言葉は使わずに記してみましたが)」であるということを既存の看護師(及び潜在看護師等)といわれる方々に伝えていくということも「地域」に「人(人材あるいは人財)」を増やして行く手立てとなるのではないかと思いました。実際にステップ♪キッズさんでは、中本さんの活動に触れた元病院勤務のスタッフさんたちがいらっしゃったりしています。

 また、中本さんは「小児訪問看護を普及するためには」というテーマの研究報告※2の中でも、「小児に訪問する訪問看護師の役割には独特のものもあるが、同行後の感想からは、経験がないと小児は受けられないという固定観念は、払拭されたのではないかと感じた。」と記されています。

 そのステップ♪キッズさん、運営母体はNPO法人NEXTEPさん※3で、居宅介護事業所ドラゴンキッズ、福祉有償運送事業も開始し、活動の幅を拡げておられ、その事業運営も堅実な形となっています※4。

 さて、実体験(同行訪問)ですが、二日間にかけて、お二人のご自宅を訪問させていただきました。

 初日は、1歳7ヶ月というとってもかわいい男の子のご自宅、山鹿市へ。なんと、退院後1週間という時期で、まさに移行期真っ只中といえる状況でした。

 まず、お部屋に入った印象として、とっても明るい室内、部屋の中心にお父さんの手作り(これが凄いステキな作りでした)というベットに光矢(こうや)くんがいらっしゃいました。光矢くん、希少難病かつ医療ニーズが高いとされる(人工呼吸器ユーザーで気管切開、径管栄養による食事・水分摂取等を要します)超重症児と呼ばれてしまうお子さんです。

 訪問の際には、看護師さんとヘルパーさん(NPO法人NEXTEPさんの運営する居宅介護事業所ドラゴンキッズさんからの派遣)とで入浴が終了したところでした。

 支援する看護師さんとヘルパーさん、とっても若い(なんとなく訪問看護師さんやヘルパーさん、ややご年配といった感があったりするのですが…)お2人で、てきぱきと動かれていました。ヘルパーさんは保母さんの資格もお持ちということで、入浴後には絵本の読み聞かせをされたりと「楽しそう」に過ごされていました。

 その間に中本さんは、光矢くんのお母さんと、これまた「楽しそう」にお話しされていました。光矢くんのお母さん、とっても明るい気さくな方で、初対面の私とも色んなお話しをしてくださいました。

 私が訪問させていただいたご自宅の少なくない方々が同様の「明るさ」を持ち合わせていらっしゃることを感じさせて頂くのですが、やはり共通するのは「量」(訪問の回数等)はともかく、なんらかの「支援」というか、「繋がり」あるいは「関わり」を持っていらっしゃるということなのだと思いました。今研究で訪問させていただいた出雲の「冴夏さん」や松山の「香穂里さん」、札幌の「智美さん」のご自宅でも同様の「明るさ」を感じさせて頂き、繰り返しになりますが、やはりそこには「関わる人」が居るということ、更にその人たちが、単なる「業」としてのみだけではないのでは?と思われる(語弊があるのかも知れません、本来の業とはどうなのか?といったことも別項で考えていきたいと思います)程の「関係性」を築いているように思われます。

 まさに、中本さんたち「ステップ♪キッズ」・「ドラゴンキッズ」のみなさんに、それを感じることができ、光矢くんとお母さん(途中、お父さんもいらっしゃいました)の居る空間(部屋)はなんともほのぼのとした楽しいひと時と化していました。

 さて、そんな関係性はどうして作られていくのか?ということですが、その詳細であるとか核心の部分は聞けていないのですが、ひとつは「安心」できる状況の中にこそ「関係性」は築かれるのではないかということです。

 ありきたりの答えを書いてしまっているのですが、今回特筆すべきことであるひとつに、病院からご自宅(地域)へ帰る(戻る)際に、熊本ではしっかりとしたシステムが組まれているということが挙げられます。

 光矢くん、自宅に帰る前、というか、一定の治療を終えた後に、3ヶ月の期間「国立病院機構熊本再春荘病院」に転院し、退院に向けた取り組み(具体的な内容はお聞きできていないのですが)※5を行うということで、光矢くんのお母さんも「3ヶ月の再春荘病院での経験で不安が解消されていった」と述べられていました。

 まさに、このことが「NICUの出口問題」という医療者本位の言葉を覆してくれる「地域生活の入り口問題(課題)」という、ご本人さん及びご家族の思いに沿ったカタチのひとつであると言えるのかと思います。

 そして、こういった流を作っていった中心的な人物が、NPO法人NEXTEP代表理事の島津智之さん(国立病院機構再春荘病院小児科医)ということです(島津智之さんについても別項で記させていただきたいと思っています)。

 翌日には、熊本市にお住まいの「夏千花ちゃん」(5歳)のお宅に同行させていただきました。ご自宅は山の斜面に建てられた県営住宅で、市街地から離れた空気も美味しいほのぼのとした場所でした。

 自宅に入ると夏千花ちゃん、座位保持椅子に座っていらっしゃいました。彼女も気管切開であるとか径管栄養による食事摂取だとかの医療ニーズの高いお子さんといわれる女の子。これまで「嘔吐が頻回にあった」だとか「再三の吸引が必要」であるということでしたが、訪問してお会いすると、なんともステキな笑顔で応えてくださいました。

 ご挨拶を終えた後に、訪問看護師さんによるバイタルチェック、そしてお風呂という流れ。夏千花ちゃんが入浴されている間に、彼女のお母さんからお話しを伺いました。

 ステップ♪キッズさんが訪問されるお子さんの中では比較的年長さん(ステーションの設立が4年目ということで、先に記したシステム=NICU〜再春荘病院〜ご家庭という流れに乗ったお子さんが多い)である夏千花ちゃん、そのお母さんは、他のお母さん方の先輩的な存在であり、ステップ♪キッズのスタッフも、多くの学びを得られる教本というような方で、ここでも、その明るさと濃厚な自らの体験(経験)を力強く語ってくださいました。少なくないお母さんたちが「明るく」、更には「力強く」体験を語れるということも、やはり前述したことと同様であるのと、そんな母親の多くが「とてつもない辛さ」を越えて来たということも共通している点だと思えます。

 夏千花ちゃんのお母さんは、さかんに「この子を知ってもらうこと」と話され、どんどん外へ出て行くというとってもアクティブな日々を過ごされていました。具体的には、毎日、通園だとかリハや通院に「通う」、更には研修会への参加等も積極的に行うといった具合で、そのことによって夏千花ちゃんの存在(顔)が多くの方に知ってもらえると仰っていました。

 二日間に渡り、お二方のご自宅に同行させていただいて、改めて、ステップ♪キッズさんの関係性を大切にされている活動に共感できました。ご本人さんたち(光矢くんと夏千花ちゃん)のステキな笑顔やご家族の楽しそうな様子を感じ、訪問看護、居宅介護というサービスのみでは無く、それを提供する「人」の重要性を繰り返し改めて感じさせていただきました。

 お母さん方とお話しさせていただ中で、中本さんとのやり取りで印象に残ったことが2点ありました。

 ひとつは、光矢くんのお母さんが計画された退院後始めての「ショートステイ」(退院後2週間程でそのようなプランが組み込まれています)に躊躇される(その理由のひとつはは後ろめたいという思いであったり)際に、中本さんが笑顔でやんわりと「託すこと」をお話しされている場面。

 もうひとつは、夏千花ちゃんのお母さんとのお話しの流れで、お母さんが夏千花ちゃんを残して死ねないということを語られました。この言葉は私なんぞも十数年前から聞く言葉で、ひとつは5歳児というお子さんの年齢でその際のことを考えてしまうということ、もうひとつはステップ♪キッズさんの支援が在りながらの言葉であるということでした。

 中本さんは、そんな際には任せてね、と、にこやかに、なんとも柔らかに感じる熊本弁で応えられていました。どこの地域でも「あなた(たち)に任せた」と言われる社会資源が整って欲しいものです。と言うよりも、中本さんのような「応えようとする」人が増えて行く、増やして行くことを強く望むのと同時に、ステップ♪キッズさんは、そんな地域を作り出して行くような雰囲気(のみならず力)を持ったとってもすてきなステーションでした。

 二日間に渡り同行させていただいたステップ♪キッズ及びドラゴンキッズのスタッフみなさん、初対面の私に気さくに応じてくださいましたご家族のみなさん、本当にありがとうございました。何より、光矢くんと夏千花ちゃん、あなたたちが「人」を動かし、「人」を育ててるんですよ!とお伝えしたいのと、あなたたちの存在そのものが、「社会的はたらき」となっているんですよ!と感謝です。本当にありがとうございました。そして私たちは、彼女・彼らの「存在の価値」と「はたらき」をもっと明確に示していかねばならないと思いました。



この報告は、公益財団法人在宅医療勇美記念財団の助成によるものです。


本文終了


この文書に対する、感想、意見、各種問い合わせ

【地域生活を考えよーかい】
トップページへ戻る