地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

誰もが暮らせる地域づくり見聞録
札幌「障がい者の小規模な住まいのあり方と介護体制を考える研修会」〜共同住宅から地域での自立を始める
〜 Part.2 医療的ケアが必要な重度心身障がい者の共同生活を考える!

誰もが暮らせる地域づくり見聞録 
2009/12/10-11
札幌「障がい者の小規模な住まいのあり方と介護体制を考える研修会」
〜共同住宅から地域での自立を始める〜
Part.2 医療的ケアが必要な重度心身障がい者の共同生活を考える!

掲載日:2010年1月7日(水)
報告者:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

今回は、表記の研修会にお招きいただき、今年2度目の札幌へと、お昼過ぎの便で向かいました。
なんだか淋しい神戸空港から、やっぱり飛行機は早いっ!と実感で、あっという間に新千歳空港に到着。今回、研修会主催者であるNPO法人わーかーびぃーさん(以下、わーかーびぃーさんと記します)にお招きいただいたのですが、その際に代表の松坂さんからは「未だ札幌は雪も無いですし暖かいですよ」ということでしたが、空港到着時の外気温は2℃。その後夕暮れと共にどんどん気温は下がっていきました。
今回もかなりの強行スケジュールでしたが、夕方から無理を言わせて頂き、札幌で「わーかーびぃー」さんと共に、かなり広範な活動を行っています「NPO法人ホップ障害者地域生活支援センター」さん(以下、ホップさんと記します)にお邪魔させていただき、お話しをお伺いしました。
ご案内いただいたのは、サービス管理責任者の田中耕平さん。とっても真摯かつ気さくな方で好印象を持たせてくれる方でした。
で、とにかく凄い「ホップ」さんの活動(事業)内容。
訪問介護に相談支援、児童向けの外出支援の他、生活介護事業や地域活動支援センター、更には全国的にも有名な移送サービス事業、そして「社会福祉法人HOP(エイチ・オー・ピー)」としても、日中一時支援や生活訓練・就労継続B型や生活介護、グループホームにケアホーム、そして、今回の研修でもテーマとなっています「福祉ホーム/自立ホーム24」も運営されています、とにかく繰り返しですが、凄いのです。
その事業内容等については下記に記していますHPを参照していただければと思うのですが、いわゆる当事者である代表理事の竹田保さんの思いが込められた筋の通った法人である印象を強く持たせて頂きました。
この9月(2009年)には「エンデバー」という障がい者支援施設も運営開始したという勢いです。
その「エンデバー」、生活介護(定員30名)、機能訓練(定員10名)、児童デイサービス(定員10名)、短期入所(定員8名)の多機能施設で、更に2階には≪障がいのある方が自らの将来「可能性」を実際に生活しながら考えていくための「寮」を開設≫(エンデバーのパンフレットから抜粋)するという大掛かりな設計です。
見方によると「小さな施設」的な捉われ方もあるのかも知れませんが、なんとも進まない(進みが良くないように思う)「地域生活移行」に対し、こういった手立てを実践していく姿勢に驚きと喜びのようなモノも感じさせていただきました。
そのパンフレットには、特に「医療的ケア」という文言が積極的に使われ、そういった方々に対しての強い思いがしっかりと表されています。
おそらく、この「エンデバー」が終の棲家という意味ではなく、同じくパンフレットにあるキーワードを拾い上げると、「創造/出来ないことを諦めないために」や、「開拓/新しい自分をみつけるために」、更に「可能性/思い描く夢を叶えるために」といった具合に、その理念・思想があるようです。
さて、そんなお話しをお聞かせいただきながら、支援センターと同一敷地にある「自立ホーム24(福祉ホーム)」を見学させていだたきました。
自立ホーム24、三階建ての立派な建物で、一階はフロアーに大浴場等があり、2階、3階が、ここで暮らされているみなさんの居室となっていました。
ここで注目しておきたいことは、今回の目的でもある「住まい」「居住(地/場)」としての在り方で、そのあたりを意識しながら見学させていただきました。
少し、自らの考えを述べると、これまでに例えば「ケアホーム」だとかという発想は余り無く、その訳は?と尋ねられると、ひとつは事業として「成り立たない(立ち難い…ですね)」ということ、それともうひとつは、やっぱり第一には「独り暮らし」が、(あるいは、も、)「可能」である(べき)という思いがあった訳なんですが、実際に私たちと共にこれまでこの地域で暮らしてきた方が窮地に追い込まれた際(この際とは、母親の他界だったりなんですが)に、なかなかそれが第一選択にはならない…どころか、あたかもお決まりのような入所施設へのレールが敷かれたりする現実があったりで、さすれば現実論として、どのような「居住」「暮らしの場」があればいいのか?(可能なのか?)という点にも強い関心を持った中、札幌あたりでの「共同住宅(生活)」という概念(のみではなく実践も)を目の当たりにし、更に見聞を深めながら、今後の在り方を考えたいと思っているところです。
そういった視点で見てみると、決して集合住宅がどうのこうのというモノ(コト)ではなく、そこに暮らしている「人」、あるいは「人たち」が、どれだけ豊かな(もちろん経済的にもそうですが、心身共にという点において)思い(気持ち)を持ち得ているのか?ということがやはり気になるのでした。
みなさん、当たり前に「自由の無い場所」よりはずっといいと仰り、「これだけでも充分です」と言われたりもするのですが、そうでもないような気もしたりして…。
かと言って、「住まい」の場によって(のみで)「豊かな暮らし」に成るというものでも無い筈で、そこんところをやっぱりずっと考え続けないといけないように感じました。
ましてや重症心身障害といわれる方々にとっての「それ」は「どう在る」べきなのか?は、じっくりとしっかりと問い続けて行かねばならないことだと改めて実感しました。
「自立ホーム24」では、医療的ケアを要する重症心身障害といわれるハタチ(20歳)の女性も暮らしていました。
未だ、お母さんの助けを借りながらでしたが、共に暮らそうとするスタッフさんとともに、その場で暮らしていました。
彼女の少女らしい(もう成人されているのですが)飾られた部屋がとても印象に残りました。
さて、この福祉ホーム、地域支援事業によるモノで、「自立ホーム24」における11人定員の福祉ホーム事業費は年間400万円足らずで、その中で常に常駐スタッフを配置しながら運営しているといった厳しい状況でもありました。
もちろん入居されている皆さんへの介護給付等は支給されているのですが、330時間程度の中での暮らしの組み立てとなっており、更に「医療的ケア」を要する方々の支援については「大変な状況」と言えそうでした。
今回お招きいただいた研修会でのテーマである「共同住宅から地域での自立を始める」について考える際、例えばケアホームだとか独り暮らしだとかのカタチから考えるのではなく、ご本人さんにとっての今在る(出来得る)最高(という表現が当たっているのかは疑問ですが)のカタチを目指す、あるいは考え(続け)ていくといったことを改めて感じさせていただきました。
その日の夜は、翌日の研修会に参加される鳥取県米子市の「NPO法人ぴのきお」のみなさん、「わーかーびぃー」のみなさんとともに北海道の美味しい食事をいただきました。
みなさんパワフルかつ深い思いを持たれた方々で、色んなステキなお話しを伺いました。
翌日11日(金)は、今回の本番である研修会が、朝から夕方にかけて行なわれました。
進行役と研修会のまとめは社団法人北海道総合研究調査会常務理事の五十嵐智嘉子さん。
社団法人北海道総合研究調査会さん、略称「HIT」(ヒット)と呼ぶらしいのですが、かなりおもしろい(変な言い方ですいません)シンクタンクで、「北海道らしさ」を追及した調査・研究・情報発信を行なうという頼もしい法人さんで、その常務理事であり医療介護研究部のトップでもある五十嵐さん、少しの間のお付き合いでしたが、奥深いお人柄を感じさせていただけたステキな方でした。
研修会では、まず鳥取県米子市からいらっしゃった「NPO法人ぴのきお」さんの代表理事である渡部万智子さんが、今回のテーマである「住まい」に関して、重症心身障害といわれる方々へのそれを提供する為の「すまいるはーと」について、法人の経緯から活動内容、中心となる親御さん(みなさん母親でした)の心境等を語ってくださいました。
「すまいるはーと」については『肢体不自由者の地域での小規模な住まいのあり方と介護体制についての調査研究』において詳しく記されています(以下にURLあり)が、その設立経緯は、重度障害者といわれる方が一人での自立は困難かも知れないが、4人同居というカタチならできるのではないか?といった親御さんたちの思いによって、それぞれのお子さんの特別支援学校卒業を機に具体的計画を進め、平成20年にNPO法人設立に至ったとのことでした。
「すまいるはーと」は2階建ての一戸建て、5LDKで、09年1月から、二名の方が宿泊の練習を始め、4名の住居者の他、宿泊体験として、医療的ケアを要する方々にも応じているということでした。
スタッフの体制は、看護師3名、支援員6名のローテーションで対応しているという事で、夜間は看護師1名、支援員1名で対応しているという事でした。
ここで少し特筆すべきこととして、鳥取県では総合療育センターとご家庭での「遠隔診療」を行なっているということで、「すまいるはーと」さんでも、医療的ケアを要する重度障害とされる方が宿泊の際の緊急時等には、このシステムが用いられるということでした。
また今回、「ぴのきお」のみなさんに引き連れられていらっしゃった総合療育センターの北原佶先生(今はシニア・ディレクターという肩書きでご活躍されているそうです)がとてもステキな方で、昨年出会ったステキな「お医者さん」の中でもとびきりな方でした(鳥取療育センターHP内の「シニアディレクターのひとこと」のURLは以下に記しています)。
今後の「びのきお」さんや鳥取県の取り組みも楽しみですし、北原先生にはぜひごゆっくりお話しを伺いたいと思いました。
続いて、私からは阪神間の現状を報告させていただき、やはり多くの方に伝えたいとするところは「当事者主体」であり、「彼女・彼らの(当たり前に在る筈が、あたかもないようにされているような)価値」、そして「力」、更には「はたらき」といったところで、そのことをもって私たち支援者などという(言わなくとも)者たちの立ち居地をしっかりと示したいといったもので、内容については「地域生活を考えよーかい」のHP(以下に記しています)をご覧いただきたいと思います。
この際も、やはり尼崎市のジャム・ルガであったり、小規模ながら「誰も」を対象にした(中に重症心身障害児・者といわれる方々や医療的ケアを要する方々も含まれる)取り組みを行なう同じく尼崎市の「地域共生スペースぷりぱ」や伊丹市の「しぇあーど」、そして西宮市の「青葉園」での「当人に対して(どれくらい)の取り組み(を行っているのか)」を紹介させていただき、そこから見えるコト・モノというのは、既成概念・制度・施設の枠組みから出た(出ないと本当の人の暮らしとは対峙できないというような)「取り組み」であり、それは具体的に「決められた(決まった)カタチのみ(例えばケアホームやグループホームのみ)ではなく」って、純粋(あたりまえ)に作られていく「一人暮らし(もちろん二人暮しも)」のカタチであり、相談支援、権利擁護ということすらも一連の流れとして湧き出てくるといったこと、すなわち、これらも彼女・彼らの「力・はたらき」のあたりまえの産物であるということをお伝えさせていただいたのですが…うまく伝わったのかは不明ですが、多くの方から反響をいだきました。
にしても札幌や鳥取には、そんな枠を払って行こうといったような空気を感じ取れるステキな雰囲気がありました。
続いて、前夜に訪問させていただいた社会福祉法人HPOさんの相談支援員・亀山由美さんによる「自立ホーム24の取り組み」の報告がありました。
「自立ホーム24」については前述の実際の見聞によるところで実感できたのですが、もう少し詳しく聞いてみると「どんなに重度な障がいがあっても、医療的ケアなどの必要性があってもご本人やご家族が本当に望んでいる生活を。それらを支援するために多様な福祉サービスを総合的に提供すること」をホームの設立趣意としているということでした。
また「自立ホーム24」の始まりが、平成14年5月に築30年のアパートを改修したところから始まり(現在は日本財団からの助成による立派な新築の建物です)、その際に、利用者Oさんという24時間支援を要する(医療的ケアを必要とする)が入居され、その方のサポートを始めたとのことでした。
その選択の過程も、学校の寮(寄宿舎)は入居困難、重症心身障害児(者)施設は空きがない、療養型の病院は受け入れが出来ない…といったところから、様々な思いを経て『地域のアパートで暮らそう』ということになったということでした。
繰り返しになりますが、身体障害者福祉ホームについて記すと、地域生活支援事業による補助金額が定員11名で360万円/年、位置付けとしては「中間施設(一人暮らしに向けた準備期間として)」、ワンルームマンション的な利用(によって、訪問系サービスの利用が可能)、管理人および生活相談員が常駐、常に2名の介護人員が確保、看護師も在住…といったところがあげられます。
また「自立ホーム24」では、家賃が3万〜3万5千円、その他必要経費を含んでの費用が約110,000円(内、お小遣いが10,000〜20,000円)ということでした。
更に、1階の交流スペースや大浴場等を地域に解放し、地域との交流を図っているということでした。
このあたりの報告を聞きながら、やはり感じるのは、カタチに捉われた発想・思想(?)ではなく、出来る限りでの試みといった風で、様々な厳しい状況の中、苦心されつつ頑張っておられる皆さんに心からエールを送りたいと思いました。
午後からは、北海道保健福祉部福祉局次長の中野孝浩さんから「医療的ケアの必要な障害児(者)への支援について」というテーマでお話しを伺いました。
「医療的ケア」に関する基本的なお話し内容はここでは割愛しますが、北海道としての特筆される取り組みとして「重度障害者医療的ケア等支援事業」(以下にURLあり)というのがあり、日中活動場所(デイサービスセンターや地域活動支援センター等)に看護師を派遣するうえで、その費用を負担するというものです。
未だ実施数は増えていないようですが、「地域づくりコーディネイター」等との連携により、今後の活用が期待されるようです。
そして最後の括りとして「医療的ケアの担い手を増やすことが必要!」ということで、「介護士等にも一定の条件で、一定の医療的行為を認める」(国の施策の動向、研修等資質向上等により)であるとか、「既存医療機関の活用」(老健、療養通所介護、有床診療所など、自立支援給付の活用)、「既存の福祉資源に外部の医療資源を取り込む(福祉事業所+外部看護師、新しい自立支援給付の活用)等を上げられていました。
また地域で生活する医療的ケアが必要な重症心身障がい児(者)の実態把握や重症心身障がい児(者)支援のための研修についても、関係機関と協議の上実施していくといった「やる気」のある北海道といったイメージをいただけました。
続いて、北海道重症心身障害児(者)を守る会の在宅部会長でいらっしゃる太田由美子さんから北海道における在宅重症者の現状と課題についてお話しいただきました。
 その中では、札幌に集中した人口分布とともに、より地域格差の広がる実態の報告があり、事例報告とあわせて、多くの母親が「一晩でもぐっすり眠りたい」と思いながらの懸命な介護に支えられているということを訴えられていました。
また、母親の言葉として、「自分に何かあったら娘には申し訳ないが施設入所しかないと思う」という報告もあり、どこの地域でもそうなのですが、ほんとに身に染みる言葉であると改めて実感しました。
太田さん、優しい眼差しから、的確な指摘をされながら、願う事として「本人の人権を守ることへの意識の共有」という言葉をあげておられました。
私も全く同様に思うところで、間違いなく存在する「彼女・彼らの価値」をしっかりと認識した上で、彼女・彼らの「はたらき」こそを示していく手立てとなるのが私たちの役割であると改めて思えました。
その後、前述の北原先生から遠隔診療についてのお話し、「ぴのきお」のみなさんからそれぞれの思いが語られ、会場にいらっしゃった方々からの質問や意見にお答えする形で時間一杯まで議論が続きました。
今回の研修会及び前日(前夜)の見学等の機会において、様々な方々の思いに触れさせて頂き、色んなことを感じることが出来ました。
今後、私たちも、「人の暮らし」「住まい」を考える際に、何をもっても大切にしたい「その人が望む」暮らしであるのですが、現状としてのそれの実現はまだまだ困難極まりないとも言えそうです。
ですが、そこで後ろ向きになるよりも、今回見聞させていただいたみなさんのように「今できる限り」の努力等によって、せめて「そうはありたくない」暮らしを強いることは避けたいなぁとつくづく思うのでしたが、現地(札幌等)でのお母さん方からの悲痛とも言える声(にもなっていない現実もあるようですし)にどういった言葉で応えていいのか、ほんとに悩ましいものでもありました。
北海道でも行政をはじめとする様々な機関・関係者みなさんが、深く考えアクションを起こそうとされています。
されどもなかなか進展していかない現実の中で、苦しい暮らしを強いられている方々もいらっしゃり、大きなシステムの変換が必要のようにも思いました。
されど、そんな中でも「なんとかしよう」との思いで活動するみなさんから、改めて個別実践の積み重ねの必要性を感じさせて頂きました。
今回、様々な機会を与えて頂き、色んなコトを感じさせていただきましたみなさんへ、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。


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