地域生活を考えよーかい

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公開要請書

いわゆる「移送サービス」について、尼崎市への公開要請書です。
近隣NPOみなさんの連名で、取りまとめ役は、特定非営利活動法人アップストリーム障がい者支援センター事務局松岡さんです。

掲載日:2004年6月24日
文責:NPO法人・地域生活を考えよーかい
李 国本 修慈


尼崎市長 白井 文 様
尼崎市企画財政局長 様
尼崎市都市政策部長 様
尼崎市市健康福祉局長 様
尼崎市福祉部長 様

公開要請書

 既に各担当部局においてはご承知のこととは存じますが、事務連絡「福祉有償運送等に係わる運営協議会の設置等について」(平成16年3月24日付)が、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長、厚生労働省老健局振興課長、国土交通省自動車交通局旅客課長の連名により、各都道府県交通担当部長、各都道府県・指定都市・中核市 障害保健福祉・高齢者保健福祉担当部(局)長、各都道府県介護保険担当部(局)長、各都道府県特定非営利活動法人担当部(局)長宛に届けられていると存じます。
 この内容につきましては、「本年3月16日付け国土交通省自動車交通局長通達によりNPO等の特定非営利団体の自家用自動車による有償運送が全国において一定の手続き、要件のもとに道路運送法80条第1項に基づき許可されることになりました」で始まり、「その手続きにおいては、市町村もしくは都道府県が運営協議会を設置し、当該協議会において協議を行なった後に運輸支局において許可申請を行なうことができる」となっています。また「運送主体となるNPO等団体との相談に応じるなど当該手続きが円滑に進められるよう格別の配慮をお願いします」と付け加えられております。

 2000年「交通バリアフリー法」の施行、そして同年「介護保険制度」スタートの中で、移動制約者(困難者)の日常生活上での”公平で自由な移動(モビリティ)”のニーズがいかに大きいかということがクローズアップされてきました。と同時に、欧米諸外国に比べて日本の地域福祉サービスが、いかに遅れているかという課題も私たちの前に鮮明に浮上してきました。
 一方で、私たちが地域福祉の不十分な部分を補完するために必要に駆られて長年取り組んできた”ドア・ツゥ・ドア”の市民参加型による移動送迎支援活動も、いまや全国で2500〜3000の団体グループによって当事者(利用者)の切実な”移動の手段”として定着するに至ってきました。
 こうした移動制約者のための”公平で自由な移動”に向けたサービスとしては、パブリック(公共交通機関)、スペシャル(民間サービス)、パーソナル(個人)の三つの手段が適切に確保される必要があると指摘されていますが、厚生労働省、国土交通省、そして行政レベルでの施策は何がしかの進展は見られるものの、ますます膨らんでいるニーズに対しては十分な対応がなされているとは言い難い現状ではないでしょうか。

 やっと重い腰を上げたのが、2003年に始まった国土交通省の「福祉移送特区」という新たな実験であったと思います。
 ただし、この中味は国土交通省による、従来型の不特定多数の顧客を対象にした営利目的によるタクシー事業への規制を少しゆるめるという内容であり、地域での助け合いを目的とした非営利の市民活動に当てはめるには、現在の地域福祉の現状からは少し遊離したものであるという危惧が、私たちだけではなく、厚生労働省の側からも声が上がっておりました。
 しかし、私たちにもっと危惧の念を抱かさせたものは、こうした「福祉移送特区」という新たな模索に対して、関西圏では枚方市が唯一声を上げただけで、他の各自治体はどこも組みすることができなかったという厳しい現実だったのです。
 こうした関西での地域福祉における”公平で自由な移動”の確保に向けた位置づけの曖昧(あいまい)さの中で、国土交通省は「福祉移送特区」を少し変形したとはいえ、今年(2004年)4月から”全国化(全国ガイドライン)”するという「通達」(国自旅第240号)を各地方運輸局長、沖縄総合事務局長宛に流し、続いて「福祉有償運送等に係る運営協議会の設置等について」(事務連絡3月24日)を都道府県・指定都市・中核市の障害保健福祉・高齢者保健福祉担当部(局)長宛に発したことは既にご承知の通りです。

 こうした一連の動きに対して、私たち尼崎市内外のNPO団体と関西STS連絡会は協働して、日常的に障害者、高齢者など移動制約者の多様なニーズに安全と安心の移動送迎支援サービスで応えるための”運転協力者研修”を積み重ねながら、関西の全自治体への「移動送迎サービスと行政との協働のあり方に関するアンケート調査」(315部が回答)を2003年末に実施し、実態の現状分析作業を行ってきました。また、各社会福祉協議会との協議も開始し、私たち自身の移動送迎支援活動の検証作業を、各種”セミナー”として有識者の参加の下に何度となく開催してきました。
 先日の4月17日には茨木市立「ローズWAM」にて、国土交通省近畿運輸局自動車交通部次長・田中俊幸氏をお招きして、今回の「全国ガイドライン」の説明をお聴きしながら、忌憚(きたん)のない意見交換を行ってきたところです。

 国土交通省としても「各自治体での責任ある審議にゆだねる」という柔軟な姿勢を持っておられることも確認されております。その点においても、ますます各自治体の地域福祉における移動制約者のための”公平で自由な移動”確保のための施策の方向性がきわめて重要な意味を持ってきていることを痛感させられているというのが、移動送迎支援サービスを市民参加型で担ってきた私たちの率直な実感です。
 関西STS連絡会には尼崎市内のNPO団体も多数参加し、現在60団体グループの皆さんが参加されておられ、行政区分も関西全域に散らばっております。
 今回の国土交通省による「全国ガイドライン」に対する各自治体におけるご見解においても、抱えておられる地域福祉の現状により多少の温度差があることも十分に察することができます。
 そこで私たちは、一度、各自治体の担当部局との、現状の資料を伴った率直な意見交換が、まずは必要ではないかと考えているところです。

―記―

  1. 運営協議会の準備のあるなしにかかわらず、今も不足している地域福祉における”公平で自由な移動”確保の課題の中で、非営利の移動送迎支援活動に制限を加える措置は絶対に避けていただきたい。
  2. 移動制約者への安全で安心な移動送迎支援サービスを健全に発展させるため、行政と非営利の市民活動との協働の営みが一歩でも進展させるための”ワークショップ(研究協議の場)”を早急に設定されることを要望いたします。

 以上、私たちがそれぞれの地域で日常活動として取り組んできた”公平で自由な移動(モビリティ)”の確保、そして、こうした市民参加型による”ドア・ツゥ・ドア”の移動送迎支援活動を”移動の手段”として利用されている当事者(利用者)からの要請内容を熟慮され、一日も早い尼崎市としての見解と方向性を示されることを切に訴えるものです。
つきましては、尼崎市の一定の見解と方向性を7月31日までに、ご返答をお願いする次第です。
よろしくお願いいたします。

2004年 6月 30日

(連絡先)
特定非営利活動法人アップストリーム障がい者支援センター
〒660−0814
尼崎市杭瀬本町1丁目23−2 カーサフジイ102号
TEL06−6483−4588 FAX06−6483−4587

関西STS連絡会 代表 上田 隆志 事務局 柿久保 浩次
NPO法人アップストリーム障がい者支援センター 代表理事 本村 晃一 事務局長 松岡 孝司
NPO法人地域共生スペースぷりぱ 代表理事 大江 尚子
NPO法人シンフォニー 代表理事 山崎 勲
NPO法人ヴィ・リール 理事 鑪ヶ崎恵子
NPO法人地域生活を支援する会りんりん 理事 後藤 真
NPO法人在宅福祉支援グループ・コスモス 理事 湯浅 羊二
NPO法人愛逢 代表理事 坂本 敬子 
NPO法人WAC ゆずり葉(申請中)代表理事 桑山 信子
障害者人権擁護センター尼崎 代表 広瀬 徹
NPO法人地域生活を考えよーかい 代表理事 李国本 修慈
NPO法人あまーち 代表理事 藤井 啓子 
NPO法人移動サービスネットワークこうべ 代表理事 姫野 操子  


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